前回の記事では、未婚化の実態について書いてきましたが、その対策と対策におけるスタンスについて、書いておこうと思います。
【1】狙うべきは「結婚を希望する人」に対する支援
結婚や家族観に対する価値観の多様化が叫ばれています。その上で前提とすべきは「結婚を希望しない人」には結婚を押し付けない、「結婚を希望する人」に支援をするということです。仮に結婚を強要したとしても、そもそも強要自体が個人の自由を阻害しているため不適切ですし、強要されて幸せな結婚生活ができるとは考えづらいといえます。必要としている人に支援を差し伸べるぐらいがちょうど良いのです。
【2】全ての政策はあなたにとってクリティカルヒットしないことを前提とせよ
一部の国会議員が様々な少子化対策について発言しては、その度に炎上しています。
例えば、未婚化対策というよりは広義の少子化対策の話とはなりますが、「三世代が近隣同士に住める支援」。夫婦共働きのご家庭で、子どもが急病になったとき、近所の実家の両親に預けてしのぐことができるというメリットがあります。実際に海外で多産な国では、子育てはまるごと祖父母に任せるケースも多々あります。その一方で、これは実家との関係が健全であるということが大前提です。実家との関係が悪い人にとっては、何がメリットなのか理解不能な政策だと言えます。
例えば、「子どもを産んだら奨学金免除」。その名の通りの制度であり、実際に奨学金返済は結婚に至るまでの交際費や結婚後の育児費などに多大な影響を及ぼしています。調査や統計でも、未婚と奨学金利用者の相関性は高く、統計通りに考えるならば目の付け所としてそうなるのは必然だと思います。ただ、奨学金を自力で返済した人や奨学金をそもそも使わなかった人にはヒットしない政策でしょう。そもそも日本維新の会に身を置く自分としましては、教育の無償化を訴えているので、奨学金云々がナンセンスだと思うところもありますしね。
どんな政策を行うにせよ「自分には合わない」と思う人は必ず出てきます。骨太の大鉈を振るう政策よりも、複数の政策を並べて自分が利用しやすい制度をビュッフェのようにピックアップしてもらうことが大事ではないかと考えられます。
【3】「婚活」の定義はあまりにも広い
そもそもどこで出会うのか、その出会いは結婚へと繋がるものなか、そしてその出会いにおける活動ははたして婚活なのか、定義が難しいと言わざるを得ません。マッチングアプリによる出会いは婚活目的の人から性的関係を持ちたいだけの人まで多種多様です。また開始前は出会うぞと意気込む「合コン」は、結果的にただの飲み会となってしまうケースもあります。また、真剣に交際しても結果的に別れてしまうということもあります。逆に、道端でハンカチを拾った出会いがきっかけで結婚に至ることもあるのかもしれません(私は実例を知らないですが)。
とはいえ、ある程度の法則性や傾向があるのも事実ですし、直接的に結婚に至らなくても、結婚に繋がりそうな要素を副次的にはらむ事柄を強化していくべきかと考えられます。
【4】公的機関が婚活支援に取り組むべき方策
「独身証明書のコンビニ発行」
一般的に、結婚相談所に登録する際は「独身証明書」の提出が必要です。北区においては、役所の窓口や郵送での発行対応となりますが、これをコンビニでも発行できるようにすべきでしょう。これだけでも、北区に本籍を置いている人の結婚相談所利用のハードルは下がります。これを機にコンビニで発行できる書類を増やすのはいかがでしょうか?
「民間婚活業者と提携する」
三重県桑名市とマッチングアプリ「ペアーズ」が提携したことが昨年話題になりました。ペアーズ(マッチングアプリ)ありきという訳ではありませんが、一定の審査を経た民間業者とうまく組むことによって、区民が婚活に挑戦しやすい風土を作るべきでしょう。
「複数回会うのを当たり前のイベントや環境の醸造」
現在のいわゆる「婚活」は、実質的には就職活動と同じです。「デート、見合い=面接」です。会ったとき、たまたま調子が悪かったとなれば、その場で不採用、次の面接に進めません。たまたま1回そりが合わなかったとしても、または長く付き合えば魅力的でも瞬間的に相手を魅了させるスキルが不足している人だったとしても、挽回の余地はないのです。そういった意味では、「理由がなくとも何回か顔を合わせられる状況」を意図的に作り出すことが必要です。かつて、学校や職場が自然な出会いの場になっていたのは、そういった要素もあります。1回完結のイベントではなく、例えば複数回講義のあるスクール型イベント(例えば全4回料理教室)などを区としても増やしていくべきでしょう。
「マッチングしやすい要素を後押しする」
婚活市場において、マッチングをする上で、年齢、年収、外見、地域・・・など、幾つかの要素は非常に重要だと言われております。変えられない要素も多々ありますが、区政が介入することで変えられる要素もあります。
差別の助長のない範囲でできそうなことといえば、「住居」と「健康」あたりでしょう。実家暮らしの人よりも、一人暮らしの人の方が、婚活市場では人気があります。実家からの独立支援をすべきでしょう。他にも、健康的な体型であることも、多くの婚活業者が同意する重要事項です。運動施設の整備、民間の運動施設との提携、街頭を増やすなどして夜ランニングしやすくするなど、区で運動しやすい環境を整えることが良いでしょう。住宅支援や運動環境の整備は、婚活に繋がったかどうかはKPI設定がしづらいですが、仮に直接的に婚姻数が増加しなくとも、若者世代が抱えている課題解決にも繋がります。
「デート環境を作る」
北区は、飲食店が多数あります。赤提灯の店も多いですが、特に王子あたりをよく探せば洒落た店も沢山あります。そういった店を利用してもらえるようにするのもひとつの手です。または、公園などを整備し、お金のかからないデートスポットを作るのもアリでしょう。前者においては地域振興として、後者においては観光客誘致として検討すれば、あからさまな婚活対策として銘打つ必要はなくなります。こちらも、婚活施策としてのKPI設定が難しいので、別の施策の抱き合わせで考えた方が良いでしょう。
「出産・育児・教育への支援、無償化」
将来的にお金が必要であるということで、女性が結婚相手の男性に対して収入を過度に期待することが幾分か緩和されるでしょう。国策として為すべきですが、国がすぐに動かないのであれば、区が少しずつでも無償化に近づけるよう動くべきでしょう。
「赤提灯の店の活性化」
赤提灯系の店というのは、客と別グループの客、客と店員の距離が近く、そこでの出会いもあり得ます。結婚に繋がる出会いかもしれませんし、未婚者既婚者問わず単純に愉しく過ごせるコミュニティのような出会いになるかもしれません。後者においても、結婚ができなかった或いはしなかった人の孤独化対策にもなります。赤羽の文化ともいえる赤提灯の店々を活性化させるのは、ひとつの手です。
【5】国政レベルにおいてでは
私は区政に対する訴えなので、今回はそこまで声高に主張はしませんが、アイディアメモとして記載しておきます。
「減税」
逆に増税を行うと現状未婚の人がますます困窮し、経済的不安からますます結婚から遠のき、更なる少子化に繋がります。また独身税の導入がブルガリアで行われましたが、少子化に拍車がかかりました。
「失業の恐怖からの脱却」
私としてはセーフティネットを強いた上で、雇用の流動化を図り、失業しても再就職しやすい社会を目指した方が良いと思います。逆に雇用の安定化や年功序列を主張する方もいますが、採用の選考がその分厳しくなる、若者が高給を望みづらくなるといった弊害も発生します。
「経済成長」
将来的に収入アップが見込めるという希望が大事です。規制緩和などで事業環境を整備するなどし、経済成長を目指すべきでしょう。
「美容外科、歯の矯正などの一部への保険適用拡大」
若年世代の美意識の高さに対応することも1つの手ではあります。
「学校における性教育の改善」
例えば、性的同意の具体的なイメージ、コンドームの正しい選び方、年収中央値の実態などもきちんと教えた方が良いのでは?と考えます。
「未婚者と既婚子持ちの人との間に対立やヘイトを無くす」
未婚者が既婚子持ちの人にヘイトを抱くことで、未婚者が独身を固辞することもありえます。例えば、職場で出産休暇、育児休暇した人の存在により、現場に残された従業員がわりを食わないような施策が必要です。増えた業務に応じて一定の補助を出す、一時的な増員をあてがいやすくするなど、やり方はあるでしょう。
「国策としての出産費用無償化、教育無償化」
上記と同様。