未婚化の原因は何なのか?

前の記事では少子化の原因は未婚化であり、東京都北区においては特にその対策が求められることを記載しました。では、そもそも論として、未婚化の原因は何なのかをまとめていきたいと思います。原因は1つではなく、複数あり、個々人によって状況が全く異なっています。

【1】価値観の多様化
調査によってばらつきはありますが、若者の概ね1~3割は結婚したくない・子どもを欲しくないなどというニュースが飛び交っています。結婚することに明確なメリットが見当たらない、趣味に忙しい、一人の方が気楽であるなどがよく挙げられる理由です。独身研究家の荒川氏はこのように自ら選んで結婚しない人を「選択的非婚」と呼んでいます。こういった価値観については、公的な立場からすると、ただ尊重するしかありません。もちろん、広報力を駆使して恋愛ブームを起こすなどの力業などはあるかもしれませんが、たやすいものではないですし、個人の自由を求める人からすれば到底受け入れられるものではないでしょう。また、行政機関が結婚を強要するのも、一種のディストピアですので御法度です。
ただ、自ら結婚しないと言い張る人の中には、恋愛や婚活に疲弊してしまい、「結婚を諦めてしまったけど体裁やアイデンティティを保つためにそう言わざるを得ない人」もいるとは考えられます。どこまで真に受けるべきなのかは見極めは難しいですし、本人が結婚を希望しないと言い張る以上は、外野からは手出しはできないでしょう。

【2】見合い結婚、職場結婚の減少
某地方議会議員が「恋愛力の低下」を訴えた結果炎上しました。おそらく恋愛力とやらをざっくり定義するならば、パートナーと親密な関係を構築する力・関係を維持発展させる力(平たく言えば恋人を作る力、関係を維持発展させる力)ということになるのでしょう。「第16回出生動向基本調査」によると、40年前も今も、恋人の有無の比率は大きく変わりはなく、恋愛力そのものは上下していないというか、基本的に2,3割前後と低い水準を維持しています。
それでは、数十年前はどのように結婚していたのでしょうか?それはずばり、見合いです。(※下記図の2021年は少し見合い結婚の割合が増えていますが、これは結婚相談所での結婚を含めております。)また、職場での出会いというのも減少しております。多様な価値観の尊重、ハラスメント防止など対応から、上司や先輩が職場内で相手を斡旋するということが難しい環境になってきました。この2つの減少により、恋愛が苦手な大多数の人たちは結婚の機会のひとつを失ったといえます。一方で、ネットでというように、マッチングアプリなどを使ったいわゆる「婚活」による結婚が増えてきました。


【3】婚活市場の構造的問題
マッチングアプリや結婚相談所など、様々な手段でいわゆる婚活の手法は増えてきました。しかしながら、実態としては、簡単に成婚とはいかない模様です。計算方法によって婚活サービスの成婚率は大きく異なるのですが、最後の駆け込み寺と言われる結婚相談所であっても、成婚率は8~22%と低いと言われています。
婚活以外での出会いを「自然な出会い」と定義すると、自然な出会いでは、性格・容姿・ステータス・関係性などを総合的に判断した上で、恋愛感情抱きます。一方で、婚活での出会いは、アプリであれ相談所であれ、「写真、年齢、居住地」の一覧をまず確認し、そこから良さそうな人の詳細情報を閲覧することとなります。また、その一覧の表示にも年収や趣味などで、選ぶ側からの絞込がされている場合がほとんどです。つまるところ、一定の基準で足切りをした後で初めて相手の内面を確認するフェーズに入ります。
あくまでも一般論となりますが、男性は女性に対して出産が可能である年齢、女性は男性の年収を求める傾向があります。特に男性の場合、「年収」は非常に大きな壁です。アプリや結婚相談所ではフィルタリングされてしまうため、低年収の利用男性は相手を選ぶどころか、自分のプロフィールを見てすら貰えません。この壁は、自然な出会いでは300万円、結婚相談所では500万円ぐらいが最低ラインと言われています。結婚相談所では、女性も身銭を切って登録しているので、最低そのぐらいの相手を捕まえないと割に合わないと思ってしまうらしいです。
ちなみに数年前の30代後半の未婚男性の年収中央値は341.7万円です。既婚者は486.6万円。明らかに年収による格差はあるのですが、いずれにしても結婚相談所の女性たちに求められる水準には達しておりません。結婚相談所では、そのような数少ない稼げる男性をめぐって、深刻な女性余りが発生しています。(マッチングアプリでは、逆に圧倒的な男性余りが発生しております。私の女友達のひとりは1時間に100件男性からのオファーが来たらしいです)
なお、上記の理由から、婚活に苦労している男性の一部は、「女性は相手に求めるスペックが高すぎる」と怨嗟の声を挙げています。また、とある政治家は「女性ももっと男の人に寛大に」と発言して炎上するほどです。ただ、女性の視点に立つと、妊娠出産育児とある程度の期間は働きづらい状況であるため、世帯年収500万円でも不安に感じる人は少なくないでしょう。金持ちと結婚したいというよりも、お金がないことが単に不安なのです。それに「結果的に稼げない男性と結婚する女性」はいたとしても、「低年収を条件としてわざわざ絞りこんで検索する女性」はよほど謙遜しているか、バリキャリで主夫が欲しいかのレアアースでしょう。
いずれにしても婚活市場は構造的に最後の駆け込み寺とは言い難い状況であり、人によってはサービスを漫然と使うだけだと成婚は難しいでしょう。

【4】その他安達が主観的に原因だと思う事柄
【1】~【3】については、統計やデータを基に、客観的に記述してきましたが、ここから先は、私のバイアスが強くなりますので、ご了承ください。
・子どもの教育への過保護
子どもには良い教育を受けさせたい、不自由なく生活をさせたいという親心より、子育てに関する見積もりを高く設定している可能性があります。大学の進学率も上がり、できれば子どもにも大学に行かせたい、そのため世帯年収を高くしたいと切実に願うでしょう。欧米諸国よりもアジアではこの傾向が強いとされています。

・実家を超える環境を求める
子育てそのものは、即物的・実利的に親には何のメリットもありません。「子どもの権利」が声高になる前は子どもは「小さな大人」であり、家を助ける存在ではありました。もちろん、今はそのような存在ではないのですし、子どもの権利は守られるべきです。ただし、親が成人した子の食事をいつまでも作るなど、いつまでも親が献身的であるケースも見られます。その状態で育った子からすると親以上に家庭内を何とかしてくれることを相手に求めることもあるでしょう。

・外見を重視する傾向
昔であれば、身だしなみを整えるが下手な人でも、実質皆婚状態では結婚できました。一方で、現代においては、相手の第一印象もその後の関係性に大いに関わるケースが増えてきております。第一印象で内面はすぐには測れないため、つまるところ、ある程度の外見で判断していることは否定はできないでしょう。男女ともにお互いに求めるハードルを上げており、条件に見合う相手がいないなら一人の方がマシであるという考え方はあるかもしれません。ハードルのうちの一つとして、外見を含めた魅力は軽視できない要素だと思われます。

・金はあくまでも「平均以上」が求められる
未婚化問題で一番の原因は男性の「金」による側面が大きいと複数の論客は主張しています。未婚の方の年収の中央値、既婚の方の年収中央値、これらを比較すれば、高年収の方の既婚率が高いのは明らかです。ただ、低所得男性の収入が上がると社会全体の未婚化は解消されるのか?という話はよく考えてみるべきでしょう。
例えば、
Aさん(年収200万円)、Bさん(年収400万円)、Cさん(年収600万円)がいるとします。
ここで、Aさんに300万円の支援金を支給するといった場合、3人の平均年収は500万円となります。Aさんは平均年収並みとなり婚活市場で足切りされづらくなりますが、Bさんが平均年収以下となり、Bさんは婚活市場で「選ばれる」のが厳しくなります。次に、全員に200万円ずつ配布した場合はどうでしょう。結局Aさんは平均年収を下回るので、厳しいでしょう。いずれも平均年収を変動させるだけのいたちごっこです。
金があれば、自然な出会いでの結婚は増える可能性はあります。既にカップルとなっている人たちが、結婚資金や子育て資金で悩んでいて結婚に踏み切れていないとき、支援金は有効でしょう。しかし、婚活での出会いにおいては、特定の相手はいない状態であり、未知なる相手から「選ばれる」ことが重要です。相手から足切りをされないために平均以上が求められる世界です。支援金を入れたところで、平均年収のいたちごっことなり、効果的とは言い難いのではないでしょうか。(あくまでも婚活対策としての支援金の話をしており、貧困対策はこれとは別に議論が必要だと思います)
実際に私の周囲には、平均年収以上で婚活している男友達が複数人いますが、彼らも彼らで苦労しています。婚活においては年収はあくまでもスタートラインなのです。もちろん、平均年収以下で成婚する人もいらっしゃいます。年収以外の魅力の持ち主か、相手を絞り込まなかったか、かなり努力したのか、いずれかだと思われます。おそらく、我々社会はこのようなケースから学ぶべきこともあると考えられます。

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