議員は金持ちたるべきか。ガチの議員の懐の話

国会議員の資産公開がニュースになっています。寄付を募った議員が実は資産総額の上位にいることなどは話題になっていますね。今回は、議員と金の話についてオムニバス形式で考えていきたいと思います。

【1】高所得者が議員になる強み
最初のテーマとしては、議員は金持ちであるべきか否かということを考えてみたいと思います。ここでの高所得者の定義を、議員になる前から税制上の「壁」となる年収850万円以上が目安となるかと考えられます。高所得者が議員になることの強みを挙げるとしたら次の通りです。
①教育レベルが高い
高所得者が必ずしも高学歴とは限りませんが、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると最終学歴が上がるほど平均月収が高い傾向があることは事実です。
②稼ぐ力が高いと有能と見なされやすい
親の七光りではない限り、物凄く稼ぐ人というのは有能だと見なされやすいです。ビジネスマンとして有能なのが、政治家として有能なのかは議論の余地はありますが、少なくとも、自分がコミットする分野で一定の成果を上げたとは見なされやすいでしょう。
③圧倒的に視野が広い
その日(或いは来月ぐらいまでに)喰うものに困っている人と貯えがある人だと、視野が格段に違うでしょう。貯えがあるということは少なくとも、数歩先の未来について見渡せられる状況だと言えます。また、教育レベルが高い、ビジネスのアンテナの高さなどからも、視野の広さを伺えるものがあります。

【2】低所得者が議員になる強み
前テーマとは逆に、低所得者の場合はどうでしょうか。一般的には低所得者の定義として「住民税非課税世帯」とすることがあるかと思いますが、多分、それだと選挙費用や供託金の捻出が厳しいので、もう少し裾野を広げて、低所得者の定義を年収が中央値未満だった人とでも定義しておきましょう。厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」および国税庁の「令和5年分民間給与実態統計調査」をもとに三菱UFJ銀行が算出した、全国の年収の中央値は351万円となります。低所得者が選挙に出馬して、議員になることの強みを挙げるとしたら次の通りです。
①低所得者層について当事者性がある
言葉通りです。低所得の世界に対して解像度が高く、そこで生きる困難について具体的な課題意識を持っています。
②人口分布的に、同属性の人が多い
選挙においては、同属性の人から共感を得やすいです。同属性が多いという意味では、その分、代弁者として期待されやすくなります。
③ストーリー的に美しい
「金儲け=悪(または、民衆の気持ちが分からない)」みたいな価値観は存在します。悪と戦うヒーローみたいな構図を作りやすいです。

【3】金持ちは、金持ちだと見せびらかさない
別に議員に限ってという訳ではないですが、色々な人と会って気づいたのは、金持ちは分かりやすく金持ちアピールをしない人も多いということです。「金儲け=悪」という考え方が一部に蔓延している中で、単純に無駄に嫉妬やヘイトにさらされるのは、心理的にも防犯的にもリスクが高いといえます。
高所得者の行動様式としては、ごく自然にいいものを身につけていたり、何だかんだでいいところに住んでいたり、当たり前のようにタクシーを使うという発想があったり(私が年収400万円以下のときは、仕事で公共交通機関の無い場所に行くでも無い限り、タクシーに乗ることが自体が贅沢だと思っていました。何なら都内で別の会社が運営している路線に乗り換えることも運賃が高くなるので避けたいとすら思っていたぐらいです)、必要に応じて時間を金で買うということをしたり、そんな感じですね。彼らとしては贅沢をしているというより、当たり前のものに必要な額を払っているという感覚なのだと思われます。逆に、価値のないものには、本当にこの価格で良いのかとシビアに疑ってかかることもあります。それの積み重ねがあってこそ、お金を儲けているのだとも言えますが。
意識的に金持ちアピールをしている人は、見栄っ張りなのか、インフルエンサーや情報商材の売人など「金持ちであると見せつけること」が商売になっているかのいずれかでしょう。

【4】都内地方議員のリアル懐事情
都内の特別行政区の地方議員は議員報酬としての額面年収が1000万円を超えています。区の違いや議長などの役職につくなどの場合によっては、1200万円を超えることもあるでしょう。正直いうと、額面上だけでいえば、私のサラリーマン時代の2.5倍以上の収入です。リストラされた影響で年収が100万円程度しかない超不遇の時期もあったので、それと比べると更にとんでもない差だとも思います。ただ、今の現状、あまり金持ちになった気分は無いというのが本音です。
議員の場合は、額面年収は自営業の売上に近いです。ただ、自営業と決定的に違うのは活動費は「額面から控除される」のではなく、「手取りから自腹」で工面しているということです。言い方を変えると、1000万円以上の収入に対応した税金と保険料を納めた後の手取りから活動費を捻出していることになります。例えば、チラシ作成の場合は、自治体によって規定が違うのですが、政務活動費と自腹の折半の場合があるかと思います。ここでの自腹とは、状況によりますが後援会からの出費の場合もあります。他人に寄付を募っていない場合は、後援会の原資は、自分個人からの寄付金つまり自腹)となります。様々な団体に所属するための会費(例えば東京JCの場合、年会費だけで18万円、懇親会や一部例会参加費は別)や付き合いでの飲食費もサラリーマン時代よりも遥かにかさみますが、こちらも当然自腹となります。ここから更に、次の選挙活動のための貯蓄もしなければなりません。本気で真面目に活動しようとすると、年間トータル50~200万円ぐらい手取りから削られますね。
さらに維新の議員の場合は、特別党員の党費とは別に、議員としての覚悟を示すということで「身を切る改革」というものがあります。国政・地方の区分や地域、議員報酬の額によってばらつきはありますが、東京維新の場合は議員報酬から1、2割の自主カット、具体的にいえば人によっては手取りから100万円近く(それ以上)を自分の選挙区外に寄付する形で捻出することになります。
そういったことを諸々換算すると、扶養とか区などで個人差はありますが、東京維新でまともに活動している専業地方議員の実質的な個人の収入は「4年に1回リストラがある額面年収600~750万円ぐらい」と考えられます。ちなみに平均年収の出し方は色々ありますが、Indeedの提示する東京都の平均年収は644.4万円です。(dodaの提示する東京都の年収中央値は400万円、平均年収は476万円ですが)Indeed試算では、実質的な個人の収入としてみると、港区、千代田区、渋谷区、中央区、目黒区などではむしろ区内で平均以下ではあり、現状の身を切る改革の額が適正なのかは議論の余地があっても良いかとは思います。東京全体として見た場合は、平均以上高所得未満というラインではあるようです。(ちなみに我が地元北区と比べると明らかに高額ではあります)もちろん、身を切る改革をしない(維新に所属していない)、党費を払っていない(維新に限らず、どこかの党にも所属していない)、地域団体との付き合いに参加しない、次の出馬も考えていない、何かしらの政策研究に自腹の金をつぎ込んでまでやっていない場合、額面1000万円強分の手取りほぼ全てがそのまま収入になるでしょう。いずれにせよ、数年前の自分から見れば高い額であるには変わりはないのですがね。とはいえ、4年に1回のリストラを考えると、情報収集のために地元の飲食店で意識的に外食を増やす以外は、数年前の自分の生活から生活レベルを安易に上げられないのも事実でして、未だに無職時代からずっと同じ1Kのアパートに住んでおります。
なお、町村議会になると懐事情はもっとシビアになり、年収が300万円台のところもあります。リンク先の町は無投票が続いていますが、通常だと選挙費用の捻出も考えなければなりませんので、副業は必須かと思います。そういった意味では、専業で議員ができる都内の環境には感謝しかありません。

【5】兼業と社会保険
維新の国保逃れがSNS上で話題になっています。端的に解説すると、実態が無い法人に就業することで、国民健康保険からその法人の健康保険に切り替える。議員報酬よりも遥かに低い報酬・賃金を法人からもらうことで、本来払うべきだった国民健康保険額よりも健康保険を低額に抑えるという手法です。完全にこの手法と同一という訳ではないのでしょうが、維新以外の議員でも似たようなことをやっている噂は聞いたことがありますし、フリーランスでも「マイクロ法人」を利用する形で、保険料を抑えるスキームはあるようです。脱法性があるかは、就業実態などを考慮するため、法人の健康保険に加入しているからといって、直ちにアウトとは言えません。ヒアリングを含め、丁寧な実態調査は必要かと思います。また、私は国民健康保険に加入しておりますが、そもそも議員は届出をすれば兼業は認められているので、国民健康保険の加入証明を出せなければアウトというのも暴論ではあります。
しかし、結果として中間報告で、4人の党所属議員が脱法的行為と捉えられる事態であったということは、社会保険改革を声高に叫び、身を切る改革で覚悟を訴えてきた身としてお詫び申し上げます。

【6】国会議員は何故金がかかるのか
国会議員は地方議員よりも積極的に資金を求めます。その理由として、選挙の規模が違います。衆議院議員の場合はいつ選挙があるか分からないので日頃から臨戦態勢で備える必要があるし、参議院議員の場合は活動範囲が広いので活動範囲を1周するだけでもかなりの旅費がかかります。また、一定の設えや活動量も求められるため、秘書を雇う必要があります。国から給与が出る公設秘書でも人手が足りない場合は、自腹をきって私設秘書を雇うこともあるでしょう。秘書は秘書で、自分のボスが落選したら、自分も職を失う極めて不安定な仕事であるため、秘書の募集も決して楽ではないようです。

以上、政治家とカネの生々しい話を書いてみました。最後に政治家に金がかかる根本的理由とは何か改めて考えてみましたが、結局のところ、民主主義のコストであるような気がしています。もっとデジタルとか使ってスマートに効率的に政治活動すればいいじゃないかという声はあるとは思いますが、スマートにやっているだけでは政治家の声は届かないし、民衆の声(一部の声のデカい人は除く)も政治家に届かないと認識しているのかもしれません。少なくとも私は、議会の中でもデジタルについては声高に叫んでいる方だと自認はしていますが、エコーチェンバーの巣窟ともいえるインターネット環境の現状では、デジタルでのスマートな活動では限界があると思っています。

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