北区議会における令和7年度第3回定例会の争点

令和7年第3回北区議会定例会が10月3日に閉会しました。様々な議案が原案通りに可決され、様々な委員会報告もありましたが、議会で特段注目を浴びた内容は4点です。事実に基づいた客観、私の思想や立場等踏まえた主観入り混じっているので、後者については青色の文字で記載したいと思います。

【1】第71号議案 北とぴあ冷温水発生機改修工事請負契約
秋の定例会では、契約関係の議案が複数審議されます。このうちのひとつに「第71号議案 北とぴあ冷温水発生機改修工事請負契約」がありました。
一般的に契約関連議案の見るべきポイントは、契約内容そのもの、落札者に過去トラブルはなかったか、入札が正当に成立していたのかなどがあります。懐疑的な立場になると、役所で内製すべき事案ではないのかなど根本的な部分より検証が必要することがあります。

本議案については、無会派(れいわ新選組)1名を除いた全員で賛成され可決しました。私としても、北とぴあは元々改修工事が必要なぐらい老朽化していること(結果的に当初の見積もりより物価高騰により1.9倍の経費がかかることになったため大規模工事が中止され、部分的な修繕を開始している)や正当に入札が完了していることを鑑み、賛成しました。ただ、反対した1名の議員の反対討論が議論を呼びました。反対討論の趣旨としては以下のとおりです。

・北とぴあ冷温水発生機改修工事請負契約金額約7.2億円は積算根拠が不明。
・東京都入札情報サービスから過去5年間の公共施設における冷温水発生機の落札価格を検索し、冷温水発生機を調べたところ、高い機器で5千万円程度。1台5千万円するとしても4台で2億円程度である。

本件については特段、議会や委員会で私は発言しておりませんので、この場で所感を述べさせていただきます。私としては、反対討論も聞きましたが、その上で、反対討論は賛同に値しない(原案どおり可決すべき)と判断しました。北とぴあの改修予定費についてもコロナ明けの数年で1.9倍に値上がりしたという経緯を知っていると、過去5年間と比較することに妥当性がありません。また、北とぴあのような大規模施設の場合、冷水発生器・ポンプともに大規模なものに対応しなければならないため、仮に過去との比較であっても、同じ機器の中でもかなり高額な部類に入ることは想像に難くありません。また、都内ではありませんが、延床面積は北とぴあより小さいですが、近い内容の工事ですと松阪市民病院 空調熱源設備改修 設計金額 658,400,000円という事例もあり、異常だとは判断しがたいです。(ちなみにChatGTPの積算だと4.7〜6.7億円であり、レンジの中では高めですが、十分に妥当な金額の範疇でもあるようです。)逆に言うと、反対討論に持ち出された数字の妥当性に疑念が持たれますし、正当な入札に基づく金額を異常だと拡散することは、建築業から区の信頼を失墜させ、今後の協力を得られにくくする問題に繋がるとも懸念しています。比較検証をする場合、妥当性のある数字と比較することが大事です。
その後の決算特別委員会でも、本来は令和6年度の決算について審査すべき会議ですが、他の会派の委員からも改めて本議案の数字に問題が無いかの確認が何度もなされました。なお、決算特別委員会での理事者答弁で追加で明らかになったことは、15年間の使用を想定している、区内他施設との比較では例えば冷温水発生器の規模は東十条区民センターの13倍に上るとのことです。

【2】令和六年度東京都北区一般会計決算及び三特別会計決算
毎年秋の定例会では、前年度の決算を認定すべきかどうか(昨年度の予算が適切に使われたと判断して良いか)の審議が行われます。仮に不認定になっても、直接的に影響はありませんが、執行機関への一定のプレッシャーになります。北区議会においては、慣例として、予算そして決算について、特別委員会を開催して、7日間に渡って審議をします。決算特別委員会において、日本共産党北区議員団、無会派(新社会党)が認定に対し反対をしましたが、その他の議員は賛成となりましたので、結果、委員会で認定となり、本会議でも同様に認定という形で可決しました。なお、今回は私が維新・無所属議員団を代表し、賛成討論をさせて頂きました。以下は討論の原文です。

維新・無所属議員団を代表して、令和六年度東京都北区一般会計決算及び三特別会計決算に賛成の立場から討論させていただきます。総じて言えることとしましては、山田区政初の当初予算に基づき、種まきとも言えるような施策が多数散見され、改革の意思と「選ばれる北区」実現への可能性を感じる部分がありました。
第一に、従来の内向きな行政運営から脱却し、外部の力を積極的に活用することで、区政に新しい風を吹き込もうとしている点です。具体的には、広報課長を採用するための活動、令和5年度に登用が開始されたDX推進アドバイザーの本格稼働、青山社中による政策アドバイス、そして商店街コーディネーターの活用などです。(仮称)北区公民連携推進条例制定に向けての動きや民設子育てひろばの運営など公民連携の試みを広げることも含めますが、庁内だけのノウハウに凝り固まらず、新しいステージへ進もうとする姿勢は評価すべきポイントだと言えます。
第二に、デジタル化の推進により、区民サービスの質的向上を図ろうとしている点です。令和6年度では、防災DXの推進として、クラウド版総合防災情報システムの運用開始、北区防災ポータル・北区防災アプリの公開、そして区ホームページの大幅リニューアルが行われました。委員会中、幾つか課題は指摘させて頂きましたが、特にホームページのリニューアルの結果、ユーザー動線の効率化が数字に現れている点などを鑑み、総じてデジタルに関する新しい試みについては、ポジティブな結果を出せたとみて良いと考えます。
2年以上続いている事業についても目標達成への意識がみられました。例えば、区内のシェアサイクルポート数は目標数を超えることができました。防災まちづくりのように課題を抱えながらも改善策を模索する事業もありました。
一方で、こうした個別の取り組みが本当に「選ばれる北区」につながるのか、まだ確信が持てない部分もあります。総括質疑でも取り上げましたが、区長は7つの主要政策のうち4つに「No.1」を掲げられています。この野心的な目標設定自体は評価いたします。しかし、No.1の定義について「経済指標やランキングだけでなく、北区民の視点に立ったもの」とのご答弁でした。確かに区民の幸せに資する政策を掲げることが大前提でありますが、率直に申し上げて、この説明では「選ばれる北区」の具体像が見えてきません。
一般論的に「No.1」という言葉のイメージは、一位、優勝などの最高の順位、他の追随を許さない独創性や強さ、規模や量的な多さ、リーダーシップ的な立場にあることなど、そういうものだと考えられます。よって、区民がNo.1と聞いて期待するのは、明確に他区を凌駕する何か、北区に住むことの誇りとなる突出した魅力ではないでしょうか。すべての分野でバランスよく頑張るというのは聞こえは良いですが、それだけでは「選ばれる」理由にはなりません。限られた予算の中で本当に「選ばれる」ためには、北区が勝負できる分野を見極め、そこに資源を集中させる戦略的な判断が必要と考えます。他区も同様の改革を進める中で、北区が真に「選ばれる」ためには、単に事業を増やすことではなく、北区ならではの突出した価値を生み出すことが必要です。
まとめますと、外部の力を活用した改革姿勢、デジタル化による基盤整備、目標達成への意識など、「選ばれる北区」への土台作りは評価します。そして、種まきの段階から収穫の段階へ移行するためには、より明確な戦略が必要です。2年半の区政運営経験を基に、「選ばれる北区」の具体像を明確にし、北区が本当にNo.1になれる分野を定めた上で、来年度予算作成をして頂くことを強く期待し、令和六年度東京都北区一般会計決算及び三特別会計決算の認定に賛成致します。

【3】シティブランディングの今後の取組みについて
委員会は、「議案に対する審議」、そして「委員会報告」という2種類のパートから成り立っています。後者については、区政の新しい動きなどが、区側から委員(議員)に対して報告がなされます。必要に応じて、委員から質問や意見等発言があり、普段ですと1つの報告に対して数分~数十分ぐらいとなります。今定例会においては、都市ブランド推進特別委員会にて、報告事項のひとつに「シティブランディングの今後の取組みについて」という項目がありました。こちらについて、質疑が約1時間という長時間に及ぶ珍しいケースがありました。

資料はこの他にもあります。https://www.discusscabinet.net/kitakugikai/
会議資料(本会議以外)>特別委員会>都市ブランド推進特別委員会>令和7年>7.10.1
「03報告(1)【別紙1】シティブランディングの今後の取組みについて」
「04報告(1)【別紙2】シティブランディングの今後の取組みについて」
にも、本件の報告事項がありますので、気になる方はこちらも参考にしてください。

なお、本事業を含めた予算が成立しているため、大枠としてやること自体は決定事項な訳ですし、賛同する訳ですが、やるからには綿密に計画を立ててしっかりやっていただきたいと意図から私からも以下のとおり質問させて頂きました。(質疑答弁ともに意訳、→が答弁)
①北区には現在桜をモチーフにした区のロゴがあるが、今回の新しいロゴそのものの意義について。
→桜の方は北区そのものをあらわす。今回のロゴは、シティプロモーション方針のもの。これからのブランドの旗印としたい。

②別紙1に提示されている3つのロゴ案はかなり方向性が違うようにみえる。区民投票を実施するまでの経緯として、担当課はどういった意見を収集し、議論がなされてきたか。
→プロポーザルで7事業者から提案をいただいた。うち上位事業者の3案ではなく、プロポーザル上位1位の事業者から3案出してもらった。


③2つの北区公式Instagramについて、そもそも何をしたいのか、本事業をやることにやって誰にどのような行動変容を促すのか教えてほしい。
→ターゲットは若年層。若年層に情報発信してもらいたい。

④公園魅力向上推進担当課は職員がいるが、Instagram用に職員が写真を撮りに行くのか。
→公園魅力向上推進担当課の職員3人が基本。また、指定管理者と協議調整する。

⑤公園のアカウントは、飛鳥山公園や赤羽自然観察公園のような大きな公園のための専属アカウントなのか、区内の小さい公園や児童遊園のようなものも取り上げるのか。
→身近な公園も対象。

⑥SPブランディングサポーターには、具体的にどこまでの業務を依頼しているのか。月1でミーティングしてもらうとか、週に何回か投稿してもらうとか決めているのか。
→検討中。

⑦別紙2のとおり、SPブランディングサポーターにせきぐちりさ氏を起用した狙いと経緯を教えてほしい。
→北区とのゆかりの有無に関わらず、発信力がある人物を優先(せきぐちりさ氏はゆかりは特にない)。プロポーザルで第一になった事業者ホリプロより提案があった。

私個人としては、役所の仕事は住民の税金で成り立っているとはいえ、命に関わるようなものを除けば、様々挑戦し、場合によっては失敗しても良いとは思っています。挑戦が無いと役所の職員も住民サービスも成長しませんから。ただ、だからといって、何でもかんでもただ挑戦すれば良いのではなく、考えに考え抜いて動いて欲しい、成功するために努力をして欲しい、そういうことなのです。

【4】会議録における発言内容の削除
今定例会において、会議録から他会派の議員の発言内容が削除される事態が2回発生しました。会議録から消えることが決定してしまったので、この場において、対象となる発言の詳細は公表できません。今回は事情を鑑み、会議録からの削除には賛同しました。しかし本来、議員の発言は非常に重いものであり、簡単に削除して良いものではないとも認識しております。そのことを念頭に私を含め、あらゆる議員は発言に気を付けなければならないとも再認識しました。

北区議会令和7年第三回定例会のハイライトは以上となります。

関連記事

ページ上部へ戻る