
今では北区の秋を代表する風物詩となった「北区花火会」。その原点をたどると、2011年の公益社団法人東京青年会議所北区委員会の挑戦に行き着きます。青年会議所はいわゆるJCと言われる団体ですね。数日前に当時在籍していたメンバーより伺った話をまとめました。
当時、志茂地域には一つの長年の想いがありました。
「もう一度、北区で花火を打ち上げたい。」
かつて北区でも花火大会が行われていた時代があり、地域にはその記憶が残っていました。もう一度、荒川の夜空に大きな打ち上げ花火を上げたい。それは地域にとって、いわば悲願でもありました。
その想いを受け止めた東京青年会議所北区委員会が掲げたテーマは、「突破」。
2010年10月、翌年の開催に向けた計画書を東京青年会議所本会に提出します。しかし、その道のりは決して平坦ではありませんでした。
翌2011年3月11日、東日本大震災が発生します。日本中が深い悲しみに包まれ、「このような時に華やかなイベントを開催してよいのか」という自粛ムードが広がりました。北区委員会でも議論を重ね、一度は委員会の総意として事業の中止を決断します。
ところが、時間がたつにつれ、社会の空気も少しずつ変わっていきました。自粛を続けるだけではなく、社会や経済を動かしていくことも復興支援につながるのではないか。むしろ、今だからこそ地域に元気を取り戻す取り組みが必要なのではないかと考えるようになります。
5月、北区委員会は再び開催の是非を議論しました。賛成は7割ほど。一方で、反対するメンバーも3割ほどいました。全会一致に近い形で意思決定することの多い青年会議所の中で、これほど意見が割れること自体、異例のことでした。一度「中止」と決めた事業を、もう一度動かす。メンバーの一度切れてしまったモチベーションを再びつなぎ合わせることも、大変だったと言います。
そして2011年10月15日。別の飲食系イベントと組み合わせる形で、そのフィナーレとして約1,000発の花火が北区の夜空に打ち上げられました。その花火は「夢花火」と称されました。そこには、東日本大震災で亡くなられた方々への鎮魂の想いも込められました。当日は雨が降ったこともあり、また、十分な広告宣伝を行っていなかったことから、開催当日、突然荒川からドカン、ドカンと花火の音が響き、何事かと驚いた地域の人も少なくなかったといいます。
開催までには、数え切れないほどの苦労があったと言います。
まず、資金集めが容易ではありません。メンバーは100人を超える青年会議所の先輩たちの会社や自宅を一軒一軒訪ね、事業への想いを説明し、寄付を募りました。そもそも当時の東京青年会議所北区委員会にとって、大規模な屋外事業を自ら立ち上げること自体が大きな挑戦でした。東京青年会議所本会にどのように計画を提出すればよいのか。どうやって人を集めるのか。資金をどう確保するのか。行政の理解をどう得るのか。必要な許認可は何なのか。そして、多くの人が集まるイベントだからこそ、事故を起こさないためにどのようなリスクを想定すべきなのか。ひとつひとつ、ゼロから学び、形にしていきました。
そこから始まった花火は、やがて青年会議所だけのものではなくなっていきました。現在の北区花火会を見て、当時のメンバーが感じるのは、「我々の手を離れた」ということです。しかし、それこそが青年会議所らしい事業のあり方なのかもしれません。青年会議所は、「明るい豊かな社会」の実現を目指す団体です。その役割は、自分たちがいつまでも事業を抱え続けることではなく、地域に必要な仕組みを生み出し、それを受け取り、育て、継続してくれる人たちへとつないでいくことにあります。
「1年で手離れするのが美しい。」
事業を立ち上げることと同じくらい、それを受け継いでくれる団体や人を見つけることが大切なのです。2011年に北区委員会が灯した小さな火は、その後、多くの地域の人々の手によって育てられました。そして今では、多くの人が北区を訪れるきっかけとなり、北区を代表する観光資源の一つへと成長しています。
なお、上記で「我々の手を離れた」と当時のメンバーからみた、あくまでも感想を記載をしていますが、もう少し厳密に記載すれば、今年も青年会議所の現役メンバーや一部OBもボランティアスタッフとして関与していますが(私、安達も含め)、あくまでも運営の主体は、様々な区内経済団体や有志の方が集まった「北区花火会実行委員会」となっています。また、一部北区からもお金は出ていますが、基本的には北区民ひとりひとりが力を合わせて盛り上げる手作りの催しのため、「花火大会」とせず、親しみを込めて「花火会」と名付けられています。よって、北区花火大会ではなく、北区花火会なのです。東京青年会議所にとっても、北区花火会は、わんぱく相撲、交通安全で「手をあげて横断歩道を渡りましょう」という小松川運動と並ぶ、実績の一例ともなっています。
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