
様々なところにあいさつ回りに行き、いわゆる地域の有力者的な存在の人と会うと、よくこんなことを言われます。
「お、安達君、ついにうちにも来たかー。活躍は聞いているよ。でも、ごめんねーうち自民党だから」
こういうことは一度や二度ではなく、もっと多いです。地域、もしくは組織のキーパーソン的な存在って、自民党員であったり、(自民党を支持しているしていないに関わらず)自民党議員と一定以上の関係性を持った人が非常に多いというのを痛感します。最近では、某ジャーナリストが「自民党支持者は劣等民族」という発言をして炎上しましたが、行政と有力者たちの関係性というのは、最近、よく考えることのひとつです。
まず、そういうキーパーソン的な存在とは、どういった人たちなのかを整理したいと思います。属性的にいえば、町会・自治会の長だったり、経済団体・業界団体の長だったりのことを指します。また、規模の大きな市民団体、慈善団体の長も当てはまるとは思います。PTAも広義には入れても良いかもしれません。彼らは、町会ですと高齢で本業から引退した人もいますが、経済団体などでは自分の本業の合間に団体運営の活動をしている人もいます。また、彼らの団体の構成員も、団体に雇われている職員を除けば、長と同様に引退者か本業の合間に動いている人が多いです。
そして、興味深いのは、意外と団体で活動していることによる直接的なメリットって、通常の場合はあんまりないということですね。つまるところ、お金を得るどころかむしろ会費を払って、時間を消費しながら活動しています。ストイックな団体では、活動の時間によって、家族団らんの時間を削り、子どもが産まれた直後のパパも容赦なく駆り出されます。ある団体の長の話を聞いたところ、ひと月30日中、28日間は何らかの形で団体のための活動をしているというレベルです。夜とかほとんど埋まっているので、友達と気軽に飲みに行くことすらままなりません。一部の人は確かに上級国民と呼ばれてもおかしくない類に値しますが、だからといって、そんな過酷な状況で、地域のため、あるいは団体の為に汗を流している姿を見ると、一概に悪くいうのは無礼だと思います。
そんな状況でも何故彼らは活動しているのか、団体の理念に基づいた範囲でのメリットといえば、人脈が広がる(取引先が増える)、団体・業界・地域を底上げする形での公益的な恩恵と理想とする社会の実現、自己成長・経験あたりでしょうか。もちろん、トリッキーな形で収益を上げようとする悪どい人やむしろ家庭から逃げる言い訳に使うちょっと可哀そうな人もいるかもしれませんが、それはケースバイケースです。
さて、そんな彼らがどのように行政にアプローチをするかといえば、政治家にロビー活動をするか役所に直接話に行くの二択です。
政治家へのアプローチとしては、首長や議員にアポを取り付けて、直談判に行くというのが一つのやり方です。また、各議会のまともに運営されている会派に対しては、業界用語でいうところの「団体ヒアリング」というイベントを晩夏~秋ごろに開催し、翌年春以降の行政に対する「予算要望」をする団体もあります。予算は、「〇〇という政策をするので、お金を〇〇円確保します」ということであり、政策実現のための約束とも繋がります。我が会派「日本維新の会北区議員団」も「政策ニーズヒアリング」と銘打って、今年も沢山の団体をお呼びし、ご意見を伺いました。
役所に直接話をする場合は、担当課の職員と電話なり対面で話をし、公益に資するものであれば、行政が後援等の形で支援をする場合があります。これによって、区民施設を早期に予約できるなどの措置がとられます。ここで非常に大事なのは、あくまでも営業ではなく、公益に資するものであるということですね。
道端でプラカードを持って政治的主張をする市民団体とか、ネットや街頭で喧嘩腰に話しかけてくる個人などはよくいますけど、個人的には、こういったロビー活動の方が、きちんと対話できるし、無下にはできないな感が強まります。そして、自民党(或いは関西の維新、立憲・国民の一部)と全く縁のない団体は、行政を動かすお作法的なものをあまり理解していない傾向が感じられます。そういった点では、自民党は団体をある意味育ててきたともいえるし、団体も恩を自民党に返すのです。また、一部の団体のメンバーは、本業の合間に時間を捻出する、プライベートを削って時間を捻出するということができる思考になった人たちです。そりゃあ、選挙で動員が可能になる訳ですよ、強いですよ。自民党が逆風に見舞われた時期であっても、岩板支持層として残るわけです。
・・・ここまでが、当選したからの1年半弱で見えた世界の現実となります。一部、利益誘導或いはちゃっかりする悪い人もいるのでしょうけども、概ねが善意で形作られた結果なのだと思います。人間、悪人になりたくて悪人やっている人はそういないです。
さて、こういった状況で、維新としてはどう彼らに向き合うかということです。前提として維新は、「企業団体から献金を受け取らない」ことを是としています。献金を受け取ってしまうとパワーバランスが崩れ、癒着や政策にブレが発生してしまうからです。とはいえ、各種業界の末端まで精通している訳でもないため、やはり専門家や団体の知恵は欲しいのです。予算要望で伺ったご意見すべてを政策に反映できるかといえば、公共性の観点、実現の可能性、党やメンバーの方針から乖離がある場合、対応を保留にすることもありますが、可能な限り、真剣に向き合うことが大事だと考えます。言い方を変えれば、他の党のようにお金で完全に手綱を握られないけど、本当に公益性のある言い分だったら献金なしに政策実現に向けて努力できる・・・といった形で、ある意味コスパの良い政党なのだと思います。また、法や良識に則った範囲で、市民団体に適切な助言を与えるのも、政治を知っている議員の役割であるのかもしれません。これができているかというのも、強い政治家、強い党のバロメーターではあるのでしょう。
最後に、世の中には団体に所属していない人たちは沢山います。むしろ、所属していない人の方が大多数です。今の若者からすれば、日々は会社と家の往復で日中は自由が皆無、夜や休日は休むか家事かネットか時々友達と飯を食う、年収は250万~450万の生活が普通です、200万円台だと飲み会月1回行くのも辛いぐらいですね。団体は団体で独自の世界があります。それぞれの世界の常識は、他の世界の非常識です。こういった様々な世界を念頭に入れて、常識ではなく良識に基づいて、住民全体の生活向上に努めていくべきなのでしょうね。