- 2024-3-11
- 議会報告
北区議会令和6年 第1回定例会におきまして、下記のように質問させて頂きました。「⇒」の部分が区からの回答となります。今回は、個人質問ではなく、代表質問という形式で議場に立たせて頂いたため、会派全体の方向性に基づいた質問をメインとさせて頂きました。昨年12月下旬に大阪視察に行った成果を盛り込み、そして令和6年能登半島地震で防災意識が高まっているからこそ、防災の質問もさせて頂きました。ほかの議員も防災には何らかの言及をしている人が多かったです。
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日本維新の会の安達しんじです。私は、日本維新の会北区議員団を代表して、冒頭、万博の機運醸成について伺ったのち、行財政改革について、公民連携について、教育について、DXについて、そして防災について、の大きく6つのテーマで質問させていただきます。
はじめに、2025年日本国際博覧会いわゆる大阪・関西万博について区長に伺います。私たち日本維新の会は、大阪で行政権を担っていることもあり、万博の成功へ強い決意を持って取り組んでいます。この万博は、単なる大阪のイベントではなく、日本経済と文化にとって画期的な機会を提供する国家プロジェクトです。予測される経済効果は最大で3兆円にも上り、地域経済の活性化はもちろん、国際的なビジネスや文化交流の促進にも大きく寄与することになります。万博の費用を国民生活に充てるべきだとの意見も頂戴しておりますが、万博の経済波及効果は地方創生や国民生活の向上にも間接的に貢献します。また、万博は単に期間内のイベントに留まらず、その後のイノベーションや教育への影響もはかりしれないものがあります。子どもたちにとっては、学びと発見の場となり、将来のイノベーションへの種をまくことになります。
万博の開催にあたり、建設費の増加や予算の精査など、さまざまな課題に直面していることもたしかです。しかし、これらの課題は、国家事業としての万博の性質上、国や関連機関との協力のもと、着実に解決に向けて進めています。建設費の上振れは日本全国の現象であり、特に万博の費用に限って問題があるということではありません。とはいえ、費用の精査はしており、工事内容の見直しなどにより157億円の削減を行うなど努力もしています。
政府は、オールジャパンで、これらの課題に取り組み、万博の成功を目指しています。当然ながら、北区においても万博の機運醸成に尽力すべきです。この1年のインバウンドの回復は、コロナ禍前の水準を超える勢いを見せており、これは万博の成功にとって非常に肯定的な兆しです。万博に合わせて訪日外国人観光客に一日でも長く日本に滞在してもらい、少しでも多く北区にも来てもらうことを戦略的に進めるべきです。
区長は万博首長連合に所属していらっしゃいます。万博首長連合とは、全国の市区町村⻑が万博に向けて機運醸成を図ることを約束している組織です。是非とも区長には、この趣旨にのっとり、より一層万博にかかわっていただきたいと思います。そこで伺います。万博の機運醸成のために今後どのようなことを区長として取り組んでいくのか、北区独自の施策を行うのか、その意気込みとプランを伺います。
⇒昨年5月の特別区長会において、国際博覧会推進本部事務局から、万博の概要説明と 各自治体における機運醸成への協力 依頼があった。機運醸成の取組み 事例として、ポスター掲示やサイネージによる掲出、SNS発信などの具体的な例示がなされていたところであり、現在、北区としても 庁舎内にポスターの掲示をしている。現時点において、北区独自の具体的な施策は行っていないが、引き続き、東京都や特別区長会と足並みを揃えながら、取り組みを進める。
次に、行財政改革について伺います。
政治資金パーティーにおける裏金疑惑や、江東区の区長選を巡る不祥事など、政治の世界で不信感を抱かせる出来事が相次いでいます。これらの問題は、「政治とカネ」への国民の信頼を深刻に損ねており、地方自治体レベルでも暗い影を落としています。事実、逮捕者が出たり、区長が辞任したりする事態まで発生しており、地方自治体の信頼性にも疑問符が付されています。このような状況の中、政治家一人一人が身を引き締め、透明性と説明責任を徹底することで、国民のそして何よりも区民の信頼回復に努めるべき時です。特に、我々地方自治体の首長としては、地域の代表としての責任と誠実さを改めて示す必要があります。
そこで区長に伺います。今こそ政治家が身を引き締めて信頼回復に努める必要があると考えますが、一連の事件と政治不信に対する区長の所見を伺います。
⇒まず、政治不信に対する私の所見について。
区長は、区民の厳粛な信託を受けた立場にあることを認識し、区民全体の奉仕者として、常に良心に従い誠実かつ公正にその職務を行うことが求められている。ご紹介の事案について、政治に対する有権者の信頼回復に向けて、しっかりと説明責任を果たすことが重要であると認識している。
「政治とカネ」の問題は、国民の政治不信を招く大きな要因であり、政治家が率先して身を切る改革を行うことで、この不信感を取り除くことがいま、まさに、求められているのではないでしょうか。区長が既に退職金の今期の廃止を決めていることは評価に値します。しかし、これを一時的な措置にとどめず、恒久的な改革として位置づけることで、より強固な信頼の構築が期待できます。恒久的な廃止は、区政における責任ある運営を示す上でも、有効なメッセージとなり得ると考えます。この問題に対する区民の意見を十分に反映し、透明かつ責任ある議論を進めることが求められています。区長の退職金の恒久的な廃止に向けて、どのように議論を進め、どのようなスケジュールで対応していくのか、具体的な計画を伺います。
⇒区長退職手当の見直しにつきましては、広く区民の皆さまのご意見も踏まえるとともに、退職手当の趣旨や性格など、特別職 報酬等 審議会において専門的知見からも審議を進めたい。
政治に対する区民の信頼を回復するためには、私たち議員も自らの行動で覚悟と責任を示すことが不可欠です。議員定数の削減は、このような覚悟の表れであり、私たち自身が率先して政治の質を高め、責任ある代表者であることを区民に示す重要な一歩です。この改革により、単に議会の規模を見直すだけでなく、議員一人ひとりが自己の役割と責任をより深く自覚し、公共の利益のために質の高い議論と決断を行うことが目指されます。そして、議員定数の削減が行政運営や議会の機能に及ぼす影響は、数字の削減を超えて、政治の品質と区民へのサービスの改善に直結しています。この観点から、議員定数削減がもたらす具体的な影響を明確にし、そのプロセスと結果が如何に政治の質を向上させ、区民の信頼を得るために貢献するかを考慮することが重要です。そこで伺います。我々は、政治不信脱却のために、議員が身を切る改革を実践し覚悟を示すことが重要であると強く信じており、議員定数の削減はその一環として考えているところです。議員定数の削減がもたらす具体的な影響について、政治、特に区の行政の質と区民へのサービスの改善に対する寄与に焦点を当てて、メリット及びデメリットを挙げてください。なお、本質問について、行政が議員定数の削減を指示する立場にないことは理解していますが、あくまでも議員数の増減が行政にどのような影響をもたらすかについての、行政としての見解をお示しください。
⇒議員定数につきましては、行政に対するチェック機能の担保、区民の皆さまの様々なご意見を適切に反映していけることや、議会が円滑に運営できるかどうかなどの視点があるものと考えている。
また、二元代表制において 区議会議員が果たす役割は大変重要であり、議員定数は様々な視点から区議会において議論されていくべきものと認識し、私としましては区議会のご意思を最大限尊重する立場であると考えている。
政治への信頼を取り戻すためには、公の資金の使用に関してもっとも高い水準の透明性と厳格な基準が要求されます。都議会を含む多くの自治体で費用弁償が廃止されている今、区議会議員としても同様の透明性を確保し、公共の財政に対する厳しい自己規律を適用することが必要ではないでしょうか。
そこで区に伺いますが、議会で決めるべきことでありますが、支出を行っている行政として、費用弁償とは何に対する費用弁償と考えているのか、費用弁償の金額をどのような合理性をもって設定していると考えているのか、伺います。併せて、一般論として地方議員の費用弁償は廃止するべきと考えるところ、地方議員を長年経験した区長の所見を伺います。
⇒費用弁償は、議員が会議等の公務のため特別区内を旅行した際に日額旅費を支給するものであり、他区と同程度の額が設定されているものと認識している。
費用弁償の在り方につきましては、様々な視点から区議会において議論されるものと認識している。
次のテーマとして公民連携について伺います。先日、公民連携について当会派全員で大阪に視察に行ってまいりました。特に大阪市のてんしばでは、市の職員の説明を受けながら、園内を歩き回りましたが、民間ならではの工夫があちらこちらに見られ、平日の午前中にも関わらず十分に活気づいておりました。大阪では、①民間企業の「強み」を活用できるプロジェクトにする、②行政と民間企業がビジョンを共有している、という2点を公民連携の特徴としており、公民戦略連携デスクが音頭を取り、民間を行政の下請けにしない、発展的な公民連携が行われていました。そこでいくつか質問させていただきます。
公民連携には、区長肝入りの「しごと連携担当課」の活躍も欠かせないのではないでしょうか。行政と民間の架け橋になるだけではなく、庁内の各部署の調整にも大事な役割を担っています。役割が近い部署として、大阪府の公民戦略連携デスクが挙げられます。しかし、今でこそ公民連携が進んでいる大阪においても、設立当時、部署の存在そのものが庁内で理解されていなかったと伺っております。そのため、庁内での理解を促進しようと、他部署の職員が一定期間、公民戦略連携デスクに派遣されるなど工夫がされているとのことです。北区においても、昨年できたばかりの課であり、現場の職員に対してはこれから研修を通じて、課や公民連携の意義を伝えていくと伺っております。しごと連携担当課について、庁内で理解を得るためにどのような施策を考えているか、研修以外でもお考えのことがありましたら、区長の見解と意気込みを伺います。
⇒しごと連携担当課は、今年度は組織発足以降、「新一万円札発行カウントダウンプロジェクト」や「DX」等、テーマを取り上げ、連携した取組みを進めてきた。「新一万円札 発行カウントダウン プロジェクト」では、各部から事業提案を受け、特色ある事業を実施し、「DX」では、プロジェクトチームを発足したほか、DX推進アドバイザーを登用して、管理職に向けた 研修を行うなど、職員の意識改革に取り組んだ。こうした組織横断的な取組みを通じて、実践的にしごと連携担当課の業務内容や連携の仕方について、庁内の理解を深めてきた。
その他にも、大阪府の公民戦略連携デスクが成功している背景には、行政にはあまりみられない仕事の仕方が多々ありました。例えば、連携案件数・年間700件と目標設定を明確に定めていること、各ステークホルダーに対して一方的な対応ではない丁寧な信頼関係の構築をするスタイルを取るという点です。また、職員に求められている資質やスキルも異なり、企業と部局の間に立って会話できること、過去にとらわれず柔軟な発想を持つ姿勢などが求められます。北区においても、公民戦略連携デスクの視察を行った上で、こうしたアプローチを模倣する価値があると考えるところ、区長の見解を伺います。
⇒令和6年度は、先行自治体などの視察や民間事業者などとの意見交換を行い、北区にふさわしい公民連携のあり方やプラットフォームの設置に向けた検討を進める。大阪府の公民戦略連携デスクは、庁内各部局と民間とのハブとなり、民間の強みを活かす有効な仕組みと認識しており、検討を進めていく際の参考とする。
北区における公民連携の取り組みとしては、まず、新一万円札プロジェクトが、行政と民間の協働の可能性を探る貴重な機会となっています。このプロジェクトは、地域経済の活性化やイノベーションの促進といった面で大きな期待が寄せられていますが、一部からは民間の強みや独創性が十分に活かされていないのではないかという指摘もあります。公民連携の成功は、民間セクターの柔軟性、スピード、イノベーションを行政の枠組みと組み合わせることによって生まれるものですが、そのバランスを適切にとることは難しい課題でもあります。この点、新一万円札プロジェクトにおいて、民間の強みが活かされ、行政も単なる業務委託ではなく、民間の強みを活かせるように支援できているのか、現段階における区長の見解を伺います。
⇒新一万円札 発行カウントダウンプロジェクトでは、本年1月、東京証券取引所の大発会にしぶさわくんが参加した。これは、民間団体のアイデアを基に、公民連携により、東京証券取引所へ提案を持ち込んだことで 実現したもので、正に公民連携により取り組んだ成果と考えている。
また、区民や民間団体からの事業提案を受けるなど新たな取り組みも実施している。
もちろん、民間の強みを活かすという考え方は新一万円札プロジェクトだけに当てはまるものではありません。今後の公民連携の発展のためには、民間の強みを活かせるような仕組みをデザインすることが重要です。大阪ではプラットフォームを作り、その中でビジョンの共有を行っています。また、単にビジョンを共有して終わりというだけではなく、賛同し動いて頂ける企業には、初期段階において、一緒に考える、提案の仕方の助言する、事例を紹介する等いわゆる伴奏型支援を行い、その後タイミングを見計らって適切な担当課に引き継ぐといったことを仕組化しております。北区においても、今後公民連携を推進するにあたり、民間の強みをより引き出しやすい仕組みを整え、区の課題とビジョンの共有をしっかりと行うプロジェクトを実施するよう、区長に明確に指示をしていただきたいのですが、区長の見解を伺います。
⇒今後の公民連携の取組みとして、民間事業者や大学等多様で幅広い主体の活躍ができる、北区にふさわしいプラットフォームの設置を進める。その中で、民間事業者等とのビジョンの共有や伴走型支援など、民間事業者等がその強みを活かせる仕組みづくりについて、十分に議論する。
また、本件については、機会の平等を強く意識すべきでしょう。特定の企業だけのやり取りを深めるのは、広い意味で癒着と見られてしまう可能性もあります。公民連携に参与したい民間への門戸を大きく開き、多様なリソースと知恵を民間からお借りできればと思います。公民連携について、どのようにして特定事業者だけでなく、多様な民間参加者を引き寄せ、各ステークホルダーの強みを最大限に活用し、かつ参入障壁を低く保つかについて、具体的な取り組みや方針を伺います。
⇒公民連携の効果を最大限に発揮するためには、これまで以上に多様で幅広い民間事業者や大学などが主体として参加できる公平な仕組みを作るとともに、透明性や持続性を確保していくことが最も重要であると認識している。その実現に向けて、先行自治体への視察や民間事業者等との意見交換を行い、具体的な方針等を策定していく。
次のテーマとして、教育施策について、教育福祉的な観点からいくつか質問させていただきます。
はじめに不登校対策について伺います。不登校と一言で表現しても、学校まで行けるのか、そもそも家から出られるのかなど、ケースによって細分化できます。不登校の子どもたちを支えるための対策は、多面的かつ柔軟なアプローチが求められ、特に「子どもの居場所」については、子どもに対して様々な選択肢が示せるように努めるべきでしょう。北区においても、ホップ・ステップ・ジャンプ教室(適応指導教室)を筆頭に多様な学び場の確保に努めている最中かと思います。現状として家から出ることができない子どもに対しては、キタコンでのスタディサプリの提供などのやり方もあるのでしょうが、それはあくまでも学習のツールのひとつであり、子どもの居場所づくりという観点では、オンライン教育環境をより充実させるべきかと思います。オンラインを活用した教育には、東京都の「バーチャル・ラーニング・プラットフォーム」も検討の選択肢としてありえるかとは思いますが、民間の教育機関との提携もひとつの手です。例えば、埼玉県戸田市教育委員会は、認定特定非営利活動法人カタリバと連携をし、メタバース上で子ども達の居場所づくりをしています。メタバースは、これまでの教員からの一方的な情報伝達から脱却し、子ども同士のコミュニケーションを促進するのが特徴です。また、N高といったオンライン上の私立学校では、部活動などのコミュニティが盛んだと伺っています。直接的な提携を結ばなくとも、そういったところから、オンライン教育のノウハウをヒアリングしてみるのも一つの手です。
北区においても、このような新しい形の教育連携に取り組むことで、不登校の子どもたちに新たな希望を与え、彼らの潜在能力を引き出す機会を創出できるのではないでしょうか。そこで伺います。不登校対策に関して、民間の力を活用することも一案ではないでしょうか。特にオンラインにおける民間教育機関との連携について、区の見解を伺います。
⇒区では、外部有識者や学校長代表などを交えた「不登校対応検討会」において、「北区立学校不登校対応基本方針」及び具体的な取組みを示した「不登校対応プラン」を取りまとめ、増加する不登校児童・生徒に対し、実施可能なものから順次、取組みを進めている。
オンラインを活用した取組みとしては、既に、「子ども相談ポスト」や、「お茶の水女子大学理科実験支援モデル事業」を実施しており、新年度からは、「スタディサプリを活用した学習支援」に加え、ご指摘の「バーチャル・ラーニング・プラットフォーム」についても、東京都の補助事業を活用した実施を予定している。
学びの多様化は、子どもたち一人ひとりの学び方や生き方の多様性を認め、支援する上で極めて重要です。特に不登校の子どもたちにとって、彼らの状況やニーズに合わせた教育環境を提供することは、その子どもたちの未来を切り開く上で不可欠な取り組みとなります。そのため、学びの多様化学校(不登校特例校)の設置は、多様な学びの機会を提供し、子どもたちの可能性を広げる有効な手段となり得ます。
現在、都内には8校の不登校特例校があり、近隣では葛飾区と江戸川区にも設置されています。これらの特例校は、不登校の子どもたちに対して、より柔軟で個別化された教育を提供することで、子どもたちの社会的、教育的な復帰を支援しています。北区においても、区独自での学びの多様化学校の設置や、近隣自治体の特例校との連携を進めることは、不登校の子どもたちへの支援を強化し、より包括的な教育環境を整える上で有意義な取り組みとなるのではないでしょうか。区独自で不登校特例校を設置する計画はありますか、計画がない場合、近隣自治体の特例校との連携を積極的に進めるべきと考えますが、区の意見を伺います。
⇒不登校対応プランの中では、不登校特例校についても検討メニューの一つとしており、新年度に設置を予定している「(仮称)北区不登校対応連絡調整会議」において課題等を整理するとともに、不登校対応にかかる大学や民間企業等との連携についても検討していく。
ヤングケアラー支援も重要です。ヤングケアラーとは、ごく若い年齢から家族の介護や世話を担う子どもや若者のことを指し、彼らは、多くの場合、通常の子どもや若者と同じように学業や自己実現を追求することが難しい状況に置かれており、社会問題となっています。
文教子ども委員会の委員としてでも視察して参りましたが、福岡市では、ヤングケアラーに対する支援を強化し、専門の相談窓口を設置しました。この相談窓口は、ヤングケアラー本人はもちろん、彼らを取り巻く家族や学校関係者、地域の方々からの相談を受け付け、専門のコーディネーターが個別の状況に合わせて解決策を共に考え、支援を提供することができます。
しかしながらヤングケアラーはその言葉そのものの認知度の低さゆえに、子ども本人が自覚することが難しく、周囲の大人たち、具体的には学校の先生が気づいて相談するケースがほとんどです。また先ほど大人という言い方もしましたけれども、令和4年3月に発表された株式会社日本総合研究所の一般国民を対象にしたアンケート調査によりますと、ヤングケアラーの認知度は、「聞いたことはあるが、よく知らない」が 22.3%、「聞いたことはない」が 48.0%と社会的認知度が低い言葉でもあります。
北区におけるヤングケアラーに対する今後の支援体制の強化や関係機関の一層の連携に関する取り組みについて、区の考えを伺います。併せて、教育関係者はもちろん、一般社会全体へのより一層の啓発強化施策についてのお考えも伺います。
⇒北区では、今年度から子ども家庭支援センターの職員がヤングケアラーコーディネーターを兼務の形で担い、関係機関による連絡会の開催、研修会の実施、子ども向け周知カードの配布など取り組みを行い、ヤングケアラー支援に関する周知啓発を進めているところ。
令和 6 年度については、ヤングケアラーコーディネーターの業務を外部委託し、新たな取り組みとして周囲の大人の気づきにつながるマニュアルの作成や子どもたちに最も身近である小中学校の教員を対象とした研修会を開催する予定。また、子どもたちに直接届くメッセージの発信方法についてもさらに検討を進め、ヤングケアラー支援の充実を目指す。
いじめ対策についても伺います。コロナ禍も明け、いじめの認知件数も再び増加に転じています。区及び学校として解消に取り組んでいることは承知しておりますが、解消率を高めるという量的解決だけではなく、質的な解決も必要です。すなわち、安易に被害者を遠ざけることで解決したという、見せかけの解決では解消とはいえません。現状、いじめ加害者に対して、出席停止の措置がとられずに、被害者が学校に行けなくなることが多いということも仄聞いたしました。いじめについては、加害者への指導とケア、そして責任を明確化し、加害者の更生と共に、被害者の安心・安全を第一に対応するべきと考えますが、見解を伺います。
⇒学校におけるいじめの具体的な対応については、いじめを受けた子どもの安全確保と不安解消を第一に考えるとともに、いじめを行った子どもに対しては、相手の子どもの精神的な苦痛が十分理解できるよう指導するとともに、いじめを行った子どもの保護者の協力も得ながら、計画的な指導及び観察を行っている。それにもかかわらず、いじめが継続されるなど、重大性が高いと判断した場合は、必要に応じて、学校での別室指導や教育委員会による直接的な指導をはじめ、警察や関係機関と連携した対応をとるよう努めている。
いじめの解消については、単なる謝罪等によっていじめが解消したと判断するのではなく、国が定める「いじめ防止等のための基本的な方針」に基づき、指導後3か月を目安に、いじめの行為が行われず、いじめを受けた子どもが不安を感じていないことを確認したうえで、判断している。
次のテーマとして、行政DXについて伺います。
北区の公式Webサイト改修が進められていると伺いました。大規模なサイトを作成する際は、ユーザビリティテストが行われるものと通常考えらえます。ユーザビリティテストは、Webサイトの利用者が使いやすく、効果的に情報を得られるかどうかを確認するための不可欠なステップです。また、Webサイトは作りっぱなしではなく、セキュリティ対策のため定期的なメンテナンスや使い勝手の良さの追求のためのアップデートも考えるべきです。ユーザビリティテストはサイト作成時に当然行われるとは思いますが、サイトの作成時だけではなく、更なる改善のためのテストは完成後も定期的に行われるのか、行われるのであればどのような体制で行うのか伺います。
⇒北区公式ホームページのリニューアルについては、現在、システム開発事業者の選定作業を行っている。リニューアルの際は、更なるウェブアクセシビリティ及びユーザ ビリティ向上を基本に、見やすく・探しやすい、インターネットの技術革新に柔軟に対応できるシステムにするとともに、区の魅力や特色を効果的に情報発信できるホームページへと改修することを目的としている。これを踏まえ、仕様の中でもユーザビリティの事前検証や、ユーザーテストの実施を事業者へ求めている。
併せてリニューアル後も外部 機関によるアクセシビリティテストを継続的に実施することで、ユーザー目線による検証を行いながら、誰もが見やすいホームページを継続して運用するための取組みを推進する。
昨年より、我が北区ではデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するために、専門的知見や独自のノウハウを持つ民間事業者からの助言や支援を受けるDX推進アドバイザーを委託しました。この委託の目的は、区民の利便性向上と職員の働き方改革を進めることにあり、民間のノウハウを持つ有能な人物の活躍を我が会派としても期待します。しかし、この役職はWebサイトに公開されているCIO補佐官とは異なり、プロポーザルの説明しか、WEB上には情報が記載されておりません。CIO補佐官の職務とどのように異なり、またどのように連携しているのかについて、明示すべきであり、DX推進について「船頭多くして船山に登る」という懸念を払拭する必要はあるかと思います。
そこで、この場でお伺いします。外部人材として登用したDX推進アドバイザーはどのような経歴をお持ちの方なのでしょうか。そして、着任してからしばらくは状況把握に努めたかと思いますが、三か月もすれば状況把握以外の何かしらのプロジェクトにも着手し始めたかと思います。DX推進アドバイザーが着手し始めたこと、今後の取り組みの予定、新たな目標について具体的な情報があれば、その内容を伺います。そのうえで、CIO補佐官とDX推進アドバイザーの間での役割分担がどのように定められているのか、その具体的な区分と連携の形を伺います。
⇒外部人材登用の選定作業を進め、昨年11月、DX推進アドバイザーとして、森本登志男氏の登用を決定した。森本氏は、マイクロソフト株式会社に16年間務めた後、佐賀県のCIO、総務省の地域情報化 アドバイザーなど数々の役職を歴任し、現在は旭川市のCDO、稚内市のDX推進アドバイザーを務めている。それぞれの役職において、主にデジタルツールを活用した県民・市民の利便性向上や業務効率化を推進し、テレワークの導入や業務時間の短縮、紙の使用量の削減、IT人材の育成など多くの成果を収め、来街者数増加、地域のDX推進をリードしている。
DX推進アドバイザーの着任後、まず、研修を実施し、管理職を始めとする職員に向けた今後の北区のDX推進の考え方を発信するなど、職員の意識改革に着手した。また、今月から、全庁でのDX相談を開始し、デジタルを活用した区民サービスの向上や業務の効率化など 様々な改善を進めて行くための本格的な支援をスタートした。今後は、各部署での DX相談支援から 業務改善につながった成果を 全庁に展開していくとともに、デジタルツールの新たな活用、デジタル人材の育成、未来型オフィスの構築、さらには、新庁舎移転後に向けた 将来の働き方のコンセプトづくりなどに取り組む。
CIO補佐官とDX推進アドバイザーの主な役割分担として、CIO補佐官は、情報化推進計画の策定支援や情報セキュリティ支援等を担い、DX推進アドバイザーは、DXを通じた新たなサービスの創出や 業務改革等を担う。この二つの役職については、それぞれの専門性を活かし、担当分野に取組みながら、さらには連携・情報共有を密に図る。
各論として、戸籍謄本のコンビニ交付サービスについて伺います。板橋区や足立区などの他区、また私の出生地である青森県の自治体でも、戸籍謄本のコンビニ交付サービスは始まっています。残念ながら、北区はそれらの自治体と比較しサービス開始が出遅れていたと言えます。それでも、今年度には予算がつき、昨年秋にサービス開始予定と打ち出しておりました。しかし、現時点でサービス開始には至っておりません。遅れている理由と現在の進捗状況について伺います。また遅延の再発防止に向けてどのような措置が講じられるのか、伺います。
⇒稼働の時期については、昨年11月を予定していましたが、本年3月開始の広域交付のシステム改修による影響等により、延期せざるを得ない状況となった。現在、本年3月下旬の稼働に向けて、準備を進めている。なお、今後、こうした新たなシステムの導入にあたっては、事業者との綿密な情報共有や、進捗管理の徹底に努める。
サイバーセキュリティについても伺います。昨年の議会にて、「サポート詐欺」について、区民への周知を要望いたしました。北区ニュースで報じるだけでなく、今月中旬にも近所の掲示板にて、サポート詐欺に関する注意喚起のお知らせが張り出されておりました。さて、今年になりまして、特に1月は災害に便乗した寄付金・義援金詐欺の不審メールが増加しました。港区におきましても、公式Webサイト上で注意喚起がなされています。
北区におきましても義援金詐欺について注意喚起活動を行っているのか、行われている場合は、具体的な内容と方法について伺います。また、このような新たな脅威について、いち早く区民に警戒するよう呼びかけることは重要です。そのためにも機敏に脅威情報を入手する必要があります。定期的な情報取得が業務として仕組化されているかについてもご教示ください。
⇒区では、義援金詐欺について、北区ニュースにおいて「震災発生後は、被災 地域に限らず、義援金や寄付を装った 詐欺などが発生しますので、不審なメールや電話があった場合には、警察署に連絡して下さい。」と注意喚起しているほか、メールマガジンやSNSにおいても、義援金詐欺をはじめとする震災に便乗した悪質事犯に対する注意喚起を行った。
また、新たなる 脅威に関する 情報について、区は、区内3警察署等と「北区サイバーセキュリティに関する協定」を締結し、警察から随時情報を入手し対応している。新たなる脅威に関する情報については、迅速に情報を入手することが重要であると考えるので、更なる関係構築に向けて警察と協議する。
最後のテーマとして防災についても伺います。今回の石川県の地震においても、SNS上でデマが発生していました。偽の被害を訴えて不安をあおったり、被災者を装い通報を呼びかけたりする悪質なデマも散見されました。長野県では2019年台風19号の際、職員で専任チームを作り、SNSから能動的に救助依頼を抽出、リスト化、関係部署への共有を行うことで、およそ50件の救助につながったということです。行政がしっかりチェックをしているという認識が広がれば、過剰なSNSでの拡散や通報で回線ふさがることも減るのではないでしょうか。そこで伺いますが、北区で災害が発生した場合、デマ対策としてどのような対策を考えているでしょうか。例えば、SNS情報収集及び広報の専任チームをつくることも一案と考えますが、区長の見解を伺います。
⇒大規模災害の発生時には、「災対 政策経営部」において、災害時における広報活動や、災害情報の収集・整理を行う体制を構築しており、SNS 情報等については、発信元を確認するなど、デマに留意した対応を行う。
北区においても防災DXの「積極的推進」をうたっています。被災時におけるネットワークインフラの安定化対策すべきと、私がかねてより委員会などで指摘いたしました事項について、令和6年度の予算案に、スターリンク衛星回線の導入が記載されており、良い案だと考えます。その他にも新たに区民向け防災ポータルサイト、防災アプリを運用する旨が記載されております。今後導入される防災ポータルや防災アプリについて、重要性が指摘されている発災後のサービスを導入する計画はありますか?例えば避難所の混雑状況の可視化やマイナンバーカードを活用した避難所受付などの避難所管理、避難者属性等に応じた支援物資の提案受付、なども実施いただきたいのですが、いかがでしょうか。
⇒現在、準備中の防災ポータル・防災アプリでは、避難所の混雑状況の発信を行う予定。なお、マイナンバーカードを活用した避難所受付や管理、障害の有無や介護の状況など避難者属性等に応じた支援物資の提供受付等については国や東京都の動向を注視しつつ、引き続き、調査・検討する。
今回の地震で残念ながら「自助」がうまく作用しなかったことも聞き及びます。例えば、備蓄について、避難者以外の方が避難所に物資を求めざるを得ない状況にもありました。これに対して、江東区では、自助による区民の防災力の更なる底上げ、防災啓発の一層の推進を図ることを目的として、区内の世帯を対象に防災商品に特化したカタログギフトの全戸配付をしました。カタログギフトほどでなくとも、簡易トイレの配布をするだけでも住民の防災の意識は芽生えることでしょう。北区におきましても、備蓄の充実化を区としても進めつつも、自助の重要性を啓発し、具体的に備蓄を各家庭や事業所で進めていただくことも必要であると考えますが、区長の見解と今後の取り組みについて伺います。
⇒区としては、まずは公助として、区民の命を守るための取り組みについて、スピード感と緊張感を持って今後も対応を進めるが、自助・共助として、区民や地域での防災対策が、最も基本的なことであり、必要不可欠なものであると考えている。
区ではこれまでも、様々な機会を通じて、各家庭や事業所での 水や食料、簡易トイレの備蓄をはじめ、家具の転倒防止や避難経路の確認など、いざという時の備えや行動の確認をお願いしてきたが、今回の能登半島地震を受けて「今日にでも 発生するかもしれない災害から自分や大切な人の命を守っていただくため」防災に関する情報をより強力に発信していく。
北区は都心に通勤する埼玉県民の立ち寄り地になることから、十分な備蓄の確保が求められる可能性があり、区営の管理施設に備蓄するだけでは限界があるため、民間事業者との連携も必要になってくると考えます。既に東京都北区地域防災計画にも記載のあるとおり、災害時帰宅支援ステーションとしてコンビニエンスストアなど民間事業者との連携は重要です。また備蓄についてだけでなく、昨年の第2回定例会におきましては避難場所の確保について質問したところ、私立学校との提携についても回答を頂きました。災害時における公民連携について、より一層進めるための今後の指針について伺います。また、最近では区が東京都行政書士会北支部と協定を結ぶように、民間事業者との連携には、個々に協定を結び、具体的な対応の協議を一層進めることも一案と考えますが、見解を伺います。
最後に、友好都市との防災連携についても伺います。今回の能登地震においても友好都市間で災害都市協定を結んでいる所はスムーズに受け入れや支援が進んだとも聞き及びました。また、北区の一部団体におきましては、友好都市の山形県酒田市の団体と協力して、能登地震に対する支援を行ったとも聞いております。現在北区においては、友好都市間で具体的にどのような体制や計画が整備されているでしょうか。例えば、一時避難を相互に受け入れる体制は確立されているのか、または災害発生時に互いに支援を提供できるような物資輸送のロジスティクスは検討されているのか、伺います。さらに、北区が被災した際、友好都市からの具体的な支援策についての現状と展望を伺います。
⇒区が締結している災害協定については、民間企業や自治体等、全ての相手先との協定事項が災害時に確実に機能することが何より重要と考えている。そこで、区では、協定相手先との間で、協定事項の見直しや、連携内容や流れ等を記した「手順書」の作成、各種訓練への参加などを通じて、協定の具体性を高め、実効性を確保する。また、災害時に求められる 協力・支援の内容は、物資の提供から生活相談まで多岐にわたるため、協定事項の充実を図るとともに、新たな協定先の開拓にも取り組む。
最後になりましたが、能登地震で被害に遭われた皆様に心からのお見舞いを申し上げ、私からの質問を終わります。