- 2023-12-31
- 雑記
東京日中友好議員連盟協議会訪中団として、2023年12月26日~29日に北京・深圳を訪問してきました。なお、本件につきましては、下記北京市西城区関連の話を除き、基本的に北区の税金を利用しての訪問ではないことを先に申し伝えておきます。
◎そもそも安達と中国について
過去記事にも似たようなことを書きましたが、私もそれなりに中国と縁があります。学生時代に少数民族調査の一環として、新疆ウイグル自治区や内モンゴル自治区に合計4回行き、砂漠や草原を長期間、馬で旅しておりました。また、新卒で入社したIT企業においては、2011年12月~2013年8月の間、北京支社の駐在員をしておりました。駐在期間中、現地の中国人に大分お世話になった一方、PM2.5による大気汚染(数メートル先の建物の色が分からなくなり、マスクを着けずに外に出ると空気に味がしました)、尖閣諸島に関する反日デモも体験しました。
前提としてですが、反日デモによって、自分のビジネスを潰されたことについては、今でも結構恨んでいます。尖閣諸島の領海侵犯などを含め、中国脅威論などもさもありなんと思っておりますし、酒を一緒に飲みかわすだけで世界平和だという思想はナンセンスだと思っております。また、サイバーセキュリティの仕事も経験して、中国からの不審トラフィックなどもこの目で見ているため、脅威はあると言い切っても良いでしょう。そして、さらに地元東京都北区においても、住民より中国人に対するクレームを頂いているのも事実であります。
その一方で私は彼らが、何を食って、何を見て泣いたり笑ったりし、どういう考え方でビジネスを進めているか、どういう気持ちで日本に来ているか、一部の人が何故日本の不動産を購入しているのか、どういう気持ちで海外で生活しているのか、多くの日本人よりは理解している自負はあります。そういった点からすれば、たとえ選挙の票にならなくとも、その他何かしらの恩恵がなくとも、いたずらに排他的思想にもなれません。特に中国の若者。円安も相まって、外貨稼ぐなら日本ではなくてアメリカやドイツ、オーストラリアに行った方が遥かに稼げる状態です。食べ物、アニメなどのコンテンツが主たる要因とはいえ、それでも日本への憧れがまだ繋ぎとどまっていることに、見方によっては感謝すべきなのかもしれません。日本は、この数十年で国力が相対的に弱まっており、世界で威張れる立場ではないことを改めてこの場で明記しておきます。
中国との付き合いで大事なのは、バランスなのだと思います。例えとして、一番イメージしやすいのは、国の玄関ともいえる国際空港です。「Welcome to Japan、おかえりなさい日本へ」という看板を表示しつつも、外国人日本人問わず、しっかりとセキュリティチェックをする訳です。そういった硬軟併せ持った感覚は必要です。日本人の中に、善人も犯罪者も混じっているように、中国人の中にも、日本との架け橋になろうと真剣に努力している人もいれば、日本に憧れと希望を持った人、純粋に良くも悪くも私利私欲で動いている人、違法行為を日常的にしている人、国家の工作員と海千山千です。自分の目で見て聞いて考えながら、目の前に迫った中国、身近にいる中国人と接して頂くと良いかと思います。また、これは中国人に対してに限らず、日本人・外国人含めた全人類に対する接し方ではないでしょうか?
◎北京で見たもの(12月26日~28日早朝)
北京市は、ご存じのとおり、中国の首都です。政治や文化の中心であると同時に、学術研究も盛んな都市です。万里の長城や胡同を始め、様々な観光名所があります。今回は観光する暇どころか、土産物を買う暇すらなかった程の超過密スケジュールでしたが・・・。
「首鋼園」
かつては工業地帯でしたが、スキージャンプ等の北京冬季オリンピックの舞台となって大きく生まれ変わった街です。オリンピックが終わってからも観光地として注目を集めております。特に廃工場をホテル化したシャングリラホテルは、ドラマの舞台になったり、SNS映えしたりするスポットとなり、土日は8割以上が予約で埋まるほどの稼働率です。
東京都北区であれば、滝野川の旧醸造試験場、浮間の工場地帯、廃学校などは見習うべきところがあるかと思います。
「医療系企業」
骨や外科に関わる研究技術で先端を行く企業。特にスマート手術室や身体に埋め込まれた後に身体に溶ける素材(取り出すために再手術不要)などのお話を伺いました。
「中関村国家自主改革モデル区展示センター」
東京ビッグサイトを思わせる展示場における科学技術を中心とした常設展示場。カーボンニュートラルや自動運転レベル4の自動車などを重点的にご説明頂きました。深圳の方でも言及しますが、今回の視察全体を通し、「脱カーボンと自動車」はやや重点的だったように思います。その他にも、宇宙開発技術、IT、断熱素材などの展示がありました。
「国家大劇院視察」
オペラ、京劇、コンサートなどを見られる巨大な建物です。今回は、それらの舞台を見るというよりも(リハーサル風景はちらりと見えましたが)建物そのものの説明を受けました。装飾、舞台装置や音響が優れているというだけの話にとどまらず、学校の芸術教育にも関わる側面から博物館のような設備も見学させて頂きました。非常に華美で豪華絢爛な建物でした。
「日中関係如何実現健康穏定発展座談会」
人民大学中国社会科学院にて、有識者たちと「日中関係を良くするにはどうすれば良いか」をテーマに座談会が行われました。日中関係は良くない状況であると認識した上で、安倍元総理の言う「戦略的互恵関係」についての言及を皮切りに活発な議論がされました。純粋な議論であり、特に何かを約束するとか要望し合うとかそういう類のものではありませんでした。ざっくりと盛り上がった議論としては
★韓国には日本人観光客が行くのに、中国に行かないという実態。相手を知ることの重要性。
(安達考察:韓国も数十年WW2の賠償請求や慰安婦問題などで日本と対立が激しかったのに、それでも一部の日本人には韓流ブームが起きたことは、韓国の広報力の強さにあるのでしょう。)
★環境や少子高齢化の問題は、共に直面する課題。一緒に課題解決方法を考えていきたい。
(安達考察:環境も少子高齢化も日本の方が先に直面した問題です。しかし、特に中国の少子化は、日本よりも酷くなると予測されます。中国の少子化の一番の原因は、一人っ子政策により跡取りとなる男の子を産ませたいとの考えで、過剰な男性余りが発生したことにあります。そこから金・家・車・学歴・そして都市圏の戸籍が無い男性は結婚の難易度が非常に高い社会となりました。)
なお、本議論は中国メディアでもニュースに取り上げられ、インプレッション数も良かったそうです。
「北京市人民対外友好協会主催の歓迎レセプション」
北京市人民対外友好協会での懇親会に参加しました。その際に、東京都北区と友好交流・協力関係を締結している北京市西城区(北京市の政治、経済、文化の中心地、人口120万人以上)の朱静伟氏に北区長からの手紙と記念品を超党派の北区議会議員団でお渡しし、引き続きの友好関係を確認しました。
◎深圳で見たもの(12月28日昼~29日)
深圳市は、中国の南側、香港の近くの新興都市です。住民の平均年齢も30代前半と非常に若さの溢れる街となっております。観光名所は少なく、日本人は主にビジネス目的で訪問することが多いようです。
「有名IT企業」「大手自動車企業」
かなりの時間をかけて2つの企業の視察に行ってきました。これらの企業は深圳市人民対外友好協会のアレンジによるものです。下の写真を見ると分かるかと思いますが、企業説明をするための展示スペースが驚くほど広いです。しかも、どちらの企業も1フロアだけでなく、2フロアにまたがっての大規模な展示スペースを用意しております。自社の凄さを知らしめるため、どれほど血眼になっているのかというのがお分かり頂けるのではないでしょうか?
どちらの企業も、脱カーボンと自動車(IT企業の方でも自動車に関わるものもある)の説明にかなりの力点を置いていました。特に蓄電池の技術革新についての説明は熱心であり、その安全性、収納性、充電効率についてをアピールしておりました。
「香港島の見える公園」
バスで空港に向かう途中、15分だけ降りて、雰囲気を見させて頂きました。純粋に眺めがいいだけでなく、議員視点でみると、とても面白い公園でした。
・EV車の給電ステーションがあり、公園散策中に給電できる。
・レンタサイクルステーションがある。
・木にQRコードが貼ってあり、植物の勉強ができる。
・公園内にクイズがあり、正解は〇m先と人の移動をコントロールしている。
・一定の間隔でPTZ式防犯カメラが設置されている。
◎まとめ
まず、今回のスケジュールは友好協会関係の方に作っていただいた訳で、自由時間は、帰りの空港と深夜にホテル周辺を散策(といってもコンビニと夜食に少し行く程度の時間)しかないぐらい、超過密で充実した訪中となりました。アレンジ感謝致します。
さて、今回、様々な企業の説明を受けました。別に私は北区にそれらの会社の製品を無理やり広めようとか、日本にもっとEV車の普及をとか、今のところ、そういうつもりは特にない訳ですけど、学ぶべきことは非常に多かったと思います。特に展示会場そのものにどれだけ血眼になっていたのか、世界に市場を広げようとどれだけ外国人にも優しい体制を整えていたのか、素直に学ぶべきです。また、これに併せて、首鋼園、シャングリラホテルや国家大劇院の視察でも思いましたが、立派な施設というのは、建物そのものでも立派なコンテンツとなり、人を魅了します。
話はずれますけど、最近は大阪万博の会場の装飾を削減せよという話も出ておりますが、相応の経済効果が見込めるのであるならば、自信をもって今の計画を遂行し、世界からの関心を集めるべきでしょう。万博に限らず、コンパクトさや低付加価値低価格だけを追求して、経済成長の起爆を阻害し続けるようでは、日本国の経済力はますます落ちてしまいます。
日本経済は、現在、GDPの伸びはいまいちで、一般的な住民としての肌感覚では徐々に生活が厳しくなってきていると感じているかと思われます。今回の訪中で驚いたのは10年前は、1本50円で買えたコーラが、いまでは100円近いということです。確かに元換算でも少し値段は上がっていますが、主たる要因としてはやはり円安で、日本人にとっての価格はほぼ倍増しているのです。また、深夜にホテルを抜け出して、敢えて日本食居酒屋に行って、ジャピオンという日本人駐在員向けのフリーペーパーを入手しました。そこに掲載されている日本人駐在員向け広告のバリエーションが10年前よりも明らかに減っていました。もちろん、コロナで多くの日本人が中国から撤退したのも事実でしょうが、日本人相手への商売に魅力が感じられなくなっているのでしょう。ジャパンアズナンバーワンなんて笑わせるな。日本はただ衰退していくのを待つべきなのか。危機感を強める視察でもありました。
そして、最後に。自分の文章を推敲して改めて思うのは、どこか文章が言い訳がましいような気がするということです。やはり、これは「日中関係が悪い」というのをどこかで意識しているからだと思います。ただ、それでもこの文章を丁寧に読んでいただいた方には、「自分で見て、聞いて、考えて、行動する」の大切さだけは届いて欲しいと思います。
◎その他思ったこと
・友好都市の件で、今回は、先方にアテンドされた訳ですけど、逆に北区でおもてなしをする場合って、仮に迎え入れる機会があった場合、どうするのだと考えました。老若男女、低所得者高所得者など様々な区民から相談事を聞いていますけど、特に高所得者の悩みとしては、北区内で接待できる場所が少ないというのを聞いています。
・中国では決済アプリ経済で、アリペイやWeChatペイでの支払いが基本で、それらのアプリを使う風習の無い日本人としては、今回の視察中でも困ることが何回かありました。さて、北区議会においては、地域通貨の話がちらほら出ています。少なくとも地域通貨ガチガチの経済にすると区外に住んでいる人が区内にお金を落として頂きづらくなるのを感じました。北区の地域通貨においても、ターゲットの設定等しっかり議論させて頂きたく思います。
・北区ではレンタサイクルのポートを数年間で倍増することを検討中です。中国においてのレンタサイクルはGPSとアプリで管理されており、好きなところで乗り捨てることが可能です。また、自転車専用道が自動車1車線分あり、安心して乗れる環境も整っておりました。